海水魚を楽しむための予算

代表的なパターンで予算を考える

予算を考える場合、水槽セッティング時にかかる器具類のほかに、水槽内をレイアウトするのに必要な費用、飼育する生体の費用・当面のメンテナンスに必要な費用なども予算の中に入れておく必要がある。

30cm水槽でエビの仲間 or 小型魚を楽しむ(予算3万円前後)

1.飼育グッズ
海水魚飼育セット(30cm) ¥7,000~¥15,000
2.レイアウト用素材
ライブロックSサイズ ¥1,500 ソフトコーラル ¥2,000~¥4,000
3.生体
スカンクシュリンプ ¥2,000~¥3,500×2 ホワイトソックス
¥3,500~¥5,000
カクレクマノミ ¥1,500~¥2,500×2 イソギンチャク 
¥2,000~¥10,000
4.メンテナンス用アイテム
エサ ¥1,500~¥3,000 人工海水 ¥1,500~¥2,000

60cm水槽でチョウチョウウオなど魚をメインに楽しむ(予算5万円前後)

1.飼育グッズ
海水魚飼育セット(60cm)Y15,000~¥30,000
2.レイアウト用素材

海藻 ¥2,000~¥4,000×2
ライブロック ¥3,000~¥5,000×2
3.生体
チョウチョウウオ(ポピュラー種)
Y1,500~¥3,000×5
4.メンテナンス用アイテム
エサ ¥1,500~¥3,000
人工海水 ¥3,000~¥4,000

加エしやすく重量が軽いアクリル製水槽の魅力

海水魚を飼育する上で、水槽はその主役ともいえる重要なアイテムだ。水槽の材質は、おもにガラス製とアクリル製が主流で、60cm以下の小型水槽ではガラス製が、90cm以上の大型水槽ではアクリル製の水槽が使われることが多い。アクリル製の水槽ではオーバーフロータイプの水槽に穴をあける加エがしやすく、またガラス製と比べ水槽自体の重量が軽いという利点がある。しかし、アクリル製はガラスと比べるとかなりやわらかいため、傷がつきやすいので注意が必要だ。アクリル製の水槽の場合、水槽を作る過程でふたつのタイプに分けられる。ひとつはアクリル板を溶剤などの接着剤で接着しただけのもの。もうひとつは接着面に溶かしたアクリルを流し込み、その後、窯に入れて熱を加えて接着する加熱重合接着によるものである。強度や仕上がり、耐久性の面から見ると加熱重合接着の方が優れているが・価格的には通常の接着と比べ高価になる。また使用するアクリル板によっても品質価格が異なるため、予算が許す限り、よいものを購入した方が見栄えもよく安心である。

海水ならばやはり欲しいオーバーフロー水槽

初心者の方が予算を抑えて小型の水槽で立ち上げようとした場合、ガラスの規格水槽になる場合が多いとは思う。しかし、将来本格的な水槽を立ち上げたくなった時のために、もう少し水槽の話をしておこう。他の機材と違って、水槽ばかりは容易に交換することはできない。たいていの場合、その水槽を何年も回すことになるのだから、じっくり考えておきたい。水槽の加エの中で、もっとも大きな加エのひとつがオーバーフロー加エ。底面に穴を開け、そこからパイプを立て、そのパイプの端面を水槽の縁より低くすることで、あふれた水がそのパイプを通して下に設けたサンプ(ろ材が入れてある場合はろ過槽)へと落ちるような構造になっている。ポンプを使って本水槽に揚水すると、そのパイプを通してサンプに水が戻るというわけだ。そのフロー管の中を通して揚水の配管をすることが多い。また、フロー管が直接露出していると、フロー管上部からフロー管の中に落ち込む生体などが発生する場合があるので、フロー管の外にさらに壁を設けて、3重曹構造になっている場合も多い。オーバーフロー構造にすると、水槽内をシンプルにできる。また他の方式とは比較にならないほど大きなろ過槽やサンプを持てる。大型の水槽の場合はオーバーフロー構造にすることが多い。プロテインスキマーやクーラーなどの機材も組み合わせやすい。アクリル水槽などで、水槽の内側の緑に幅3~4cmの帯板が貼り付けられているのをフランジという。アクリル水槽の場合構造的な補強の意味が強いのだが、塩ダレの防止、魚の飛び出し防止にも効果的。ガラス水槽でも飛び出し防止などのために設けられることがあるが、シリコンなどで接着しなければならないため、フランジはアクリル水槽の方が美しく仕上がる。長い付き合いになるものだから、大型の水槽はじっくりと選びたい。

水槽の置き場所選びは慎重に


15cm×15cm×15cm 3kg~5kg
30cm×20cm×18cm 11~13kg
40cm×28cm×25cm 28~30kg
45cm×30cm×25cm 34~37kg
45cm×30cm×30cm 41~44kg
60cm×36cm×30cm 65~70kg
60cm×45cm×45cm 125~130kg
90cm×45cm×45cm 185~200kg
120cm×45cm×45cm 245~250kg
120cm×45cm×60cm 325~330kg
150cm×45cm×60cm 410~415kg
150cm×60cm×60cm 545~560kg
180cm×60cm×60cm 650~670kg

水槽サイズにもよるが、まずその重量に耐える場所に置かなければならない。どこにでも置けるような小さな水槽はコンディションの変動が激しいので初心者には難しい。初心者に勧めたい45cm、60cm規格水槽あたりになると、できれば専用の水槽キャビネット(これも海水魚専門店などに売っている)、またはそれなりの耐荷重性のある台の上に置きたい。90cm以上の水槽はかならず専用台に置いた方がいいだろう。また、家の構造的にも壁面や角などに近い方が構造的に強い。部屋の中央部などに大型の水槽を置く場合には、床の補強が必要になる可能性が高い。また、どこに置くにしても、きちんと水平が取れているかどうかは水準器などで確認しておいた方がいい。キッチンやお風呂など、給排水できる場所が近いと便利。排水の処理が容易だからとベランダ側や窓辺に置くケースもあるが、これはできれば避けたい。日光が当たると、とりわけ夏などは温度変化が激しくなり、水槽のコンディションが崩れやすい。海水魚は淡水の魚と違って、温度変化に極めて弱い。直射日光の当たらない場所に置いて温度変化を抑えたい。また、日光が当たると、コケが大発生する場合もある。照明を設置し、それをON/OFFすることで、明るい時間をコントロールするようにしたい。同様に出窓も水温の点で問題だし、やむを得ず置く場合には荷重についても十分確認したい。また、魚が水槽外の音や光に怯えることもある。テレビや、大音量を出すことのあるオーディオの横は避けたい。開閉の衝撃の激しいドアなどの近くも望ましくない。また、これは人間側の問題だが、水音や明るさが気になる場合もあるので、寝室の近くは避けた方がよい。

海水魚の飼育に適した照明の種類とは?

一般的な60cmの標準水槽では、20Wの蛍光管が2灯ついたものが一般的だ。しかし、光が必要なサンゴやソフトコーラルを飼育となるのであれば、さらに明るい照明が必要になってくる。明るい南の海で暮していた海水魚も、我々と同じように昼と夜のサイクルを作ってやる必要がある。照明は、蛍光灯もしくはメタルハライドランプという電球にガスを封入した高輝度のランプを使う。メタルハライドランプは高価なので、45~60cmぐらいの小型水槽で魚を中心に飼育するなら、蛍光灯で十分。蛍光灯はそれぞれ水槽サイズに合わせた器具が販売されている。魚に若干のサンゴを加えるなら2~3灯の灯具を使うといいだろう。蛍光管は海水魚専用を使おう。熱帯魚用や水草用のものよりブルーの色味が強くなり、海の色味を再現するようになっている。サンゴの育成においても、ブルーの色味は大切。海水魚用、サンゴ用などとして売っているので、それぞれ1本づつ使うなど、色の違う複数の蛍光管を組み合わせて使うのもいい。照明は1日9~12時間ほどを目安に当てる。自然光に合わせてもいいが、飼い主が水槽を見られないと意味がないので、帰宅、就寝に合わせて、点灯時間全体を遅くしてもいいだろう。飼い主の生活時間が規則正しく、日常的に点灯/消灯をすることが可能なら、手動で点灯してもいい。それが難しいようなら、ホームセンターや海水魚ショップで販売されているタイマーを利用するといいだろう。規則正しく水槽の中を明るくして、魚に生活のリズムを作ってやることが大切だ。サンゴやイソギンチャクを飼育する場合には、一般より明るい照明が必要になる。サンゴには日光を必要としない陰目性サンゴと、光合成でエネルギーを得るため日光を必要とする好日性サンゴがある。好日性サンゴと、イソギンチャクは蛍光灯多灯かメタルハライドランプの光量を必要とする。どのぐらいの強さの照明が必要かは、サンゴやイソギンチャクの種類にもよるので、本やインターネットで調べるか、購入時にショップで相談してみよう。

サンゴを飼うなら欲しい水槽用クーラー

飼育環境を飛躍的に向上「熱帯魚なのだから水温の上昇には強いはず」と考える人が多いようだが、海洋の温度は想像以上に一定で、南の海でも、よほどの浅瀬でなければそれほど温かくなることはない。だから、魚も25℃前後の一定の水温で飼育したいのだが、その魚より一定の温度で飼う必要があるのがサンゴだ。サンゴは28℃ぐらいが限界。30℃になると多くのサンゴはダメになってしまう。もっともこのあたりはキッチリ30℃で死滅するわけではなく、水自体が清浄ならもう少し耐えることもあるし、30℃に到達しなくても、水質の低下と水温上昇の相乗効果でダメになってしまうこともある。水温が上がると、化学反応が促進され、水質の低下がより早く進むのも相乗効果を促進させる。そこで必要になってくるのが水槽用クーラーだ。ある程度デリケートな種類のサンゴや、イソギンチャクを飼育して夏を越そうとすると、もはや必須の装備だといえるだろう。仕事で外出している間中「今日は暑いが、家のサンゴは大丈夫だろうか?」と心配し続 けるのはつらすぎる。また、ひとつサンゴが落ちると水質が低下して、連鎖反応的に崩壊する可能性もある。最近の暑い日本の夏を考えると、もはや必須の装備だといえるだろう。水槽用クーラーの構造はコンプレッサーで冷媒を循環させ、コンデンサーの部分で放熱しつつ、その冷媒がコイル状の部分で気化することで、チラータンクの中の水を冷やすようになっている。このチラータンクの中へ、飼育水を循環させればいいわけだ。水槽用クーラーの持つキャパシティはそれぞれのクーラーメーカーのカタログなどに記載されているが、さまざまな照明やポンプの発する熱量を考えると、クーラーのキャパシティ設定はかなり余裕を見た方がいい。大きいクーラーなら、水を短時間で冷却するので、発生する書も少なく、クーラー自体の寿命も伸びる。

淡水魚と海水魚で違う底砂選び

淡水性熱帯魚と海水魚では、使用する砂が異なる。淡水性熱帯魚は、水草などの育成に適した弱酸性の水質を保つ専用の底砂を使うことが多い。海水魚の飼育では、アルカリ性の水質を保つ必要があるため、底砂は水質をアルカリ性に保つものであることが原則。実際の海水魚飼育では、見た目が自然なサンゴ砂が一般的だ。

サンゴ砂の種類

サンゴ砂は、死んだサンゴの骨格が波などで砕かれ、角が削られて砂状になったもの。その成分のほとんどは炭酸カルシウムだ。海水魚用に販売されているサンゴ砂は、小指の先ぐらいのサイズからパウダー状のものまで、いろいろなサイズがある。粒の大きなものは、ろ材として使われることが多く、砂用は小豆粒より組かいものが多い。底砂は、水槽を美しく見せる役目のほかに、水質をきれいに保つろ過の働きも果たす重なアイテム。水槽の底に5~10cmの厚さに砂粒サイズのサンゴ砂を敷き、表面に緒やな水流をあてることで、優秀なフィルター機能を発揮する。

水質が早く安定するライブサンドとは?

海水魚用の底砂、とくにD.S.B.方式に使用する砂として用いられることが多いのが、ライブサンドだ。ライブサンドとは、言葉のとおり海中から採取したそのままの砂のこと。砂の表面には生きたままのろ過細菌が付着している。そのため、ライブサンドを使うと、通常のサンゴ砂と比べて、水質の安定が格段に早くなる。「ライブアラゴナイト」などの名前で、海水とともに袋に入ったものが市販されている。

底砂を厚く敷いて水流を作ると、D.S.B.(ディープサンドベッド)方式と呼ばれるろ過システムが完成する。このD.S.B.ステムでは、底砂の内部を無酸素状態にすることによって、硝酔塩を窒素ガスに分解し、水槽の外へ放出してくれる。簡単な方法だが、そのろ過能力は高い。ただし、薬品類は使用しないこと。薬品を使うとろ過バクテリアが死んでしまうからだ。

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