熱帯魚が病気になっても、残念ながら専門の医師がいないので、自分で治療するしかありません。一番多いのは、新しい魚が病気を持ち込むケースでしょう。しかし落ち着いている水槽でも、水質や水温の変化などによって、それまで隠れていた病気がいきなり表に出てくることがあります。いずれにしても、早期発見、早期治療が最も重要です。
治療の基本は3つ
熱帯魚の治療の基本は「塩、メチレンブルー(薬剤)、水温を上げる」の3つといわれます。
①塩について塩水浴をさせる場合、塩は必ず租塩(あらじお)を使い、1~3%までの濃さで治療します。水1リットルにつき塩10gを溶かせば1%です。水草が入っていなければ、直接水槽に入れてもかまいません。その場合は、60センチ水槽に、コップ4分の1~5分の1です。
②薬剤について薬浴をする場合、まず熱帯魚ショップへ行ってアドバイスを受け、症状にあった薬を求めて下さい。白点病によく使われる色素剤(メチレンブルーなど)や、それに抗菌剤を混ぜた様々な薬剤が販売されています。薬剤の効果はたいてい5~7日。色素剤の場合は光などで分解されて徐々に色が薄くなるので、効果の切れたことがわかります。
商品名としてはグリーンFシリーズ、トロピカルシリーズ、パラザン、リフィシュなどです。
熱帯魚の病気は高温に弱いことが多いため、30℃程度に水温を上げると、病原体を殺すことができます。水温はいきなり高くしたりせず、1日1℃くらいの割合で徐々に上げて下さい。治療が終わって下げる時も同様です。ただし水温が高いと熱帯魚の消耗も激しいので、様子を見ながらにします。
治療するにあたって
治療用の水槽(トリートメント・タンク)があればベストですが、ない場合は温度管理をしたバケツでもかまいません。飼育用の水槽からトリートメント・タンクに移す場合は、水合わせを忘れずにして下さい。ろ過槽のない場合はアンモニアがすぐたまるので、毎日水替えをしてその分だけ薬を足しましょう。ただし白点病などは、1カ所でも白点のついた魚がいれば、水槽にはその数千倍の子虫がいるといわれています。伝染病の場合、飼育用の水槽とフィルターごと治療した方がよいでしょう。ろ過バクテリアのことを心配してフィルターを止めてしまう人がいますが、水質が悪化して熱帯魚がますます弱ってしまいます。薬剤を入れるとろ過バクテリアも多少は弱りますが、淡水水槽の場合、もとの状態になるまでそれほど時間はかからないはずです。 また、治療するときは普段よりエアーレイションをしっかりすること。薬剤は、分解する時に大量の酸素を奪うため、熱帯魚が酸欠になりやすいのです。エサは、熱帯魚が体力を失わないよう、いつも通りに与えて下さい。水草は枯れる恐れがあるので、薬剤に浸けてはいけません。
■白点病(はくてんぴょう)
最もかかりやすく、熱帯魚の病気の80%を占めるといわれています。早期発見をすれば治りやすい病気です。
白点虫(イクチオフチリウスというせん毛虫)が皮膚の中に寄生します。
ヒレや体表に、1m以下の白い点がポッポッとでき、次々と増えていきます。熱帯魚はかゆがって体を石などにこすりつけたり、水面に浮いていたりすることも。放置すると体中に白い点がついて塩をまぶしたようになり、衰弱して死亡します。
白点病用の治療薬を入れます。白点虫は15~18℃で最も増える性質があるので、水温を30℃にし、塩とメチレンブルーを併用して治療するのも効果的です。
■力ラムナリス病
尾ぐされ病、ヒレぐされ病、口ぐされ病、エラぐされ病ともいいます。グッピーのオスやエンゼルフィッシュなど、ヒレの長い熱帯魚がかかりやすい病気。伝染力が強く、あっという間に水槽中に広がることがあります。
カラムナリス菌による細菌感染症です。感染した場所によって尾ぐされ病、口ぐされ病をなどと呼び方が変わります。
尾やヒレが最も感染しやすい部位で、はじめは緑が白濁します。やがてすり切れてポロポロになり、溶けるようになくなってしまいます。口に感染した場合は自濁して溶けるようにくずれ、エラの場合は粘液が出て、やがて欠けてしまいます。患部を見るとカラムナリス菌が、粘着性のある黄白色の塊になっていることもあります。感染した熱帯魚は食欲がなくなり、衰弱して死亡します。
尾ぐされ病用の治療薬(パラザンなど)か、塩を入れます。
■水力ビ病
綿かぶり病ともいわれ、低温で飼われる金魚などに多い病気ですが、熱帯魚がかかることもあります。
体表に水力ビ菌が寄生する真菌病です。ただし、健康な熱帯魚がいきなり水力ビ病になることはありません。スリ傷や感染症などで弱ったところへ水カビ菌が取りつき、二次的に発病するものです。
口先やヒレは白い綿をかぶったようになり、体表は白っぽく膜を張ったようになります。衰弱して、やがて死亡します。
白点病用の色素剤入り治療薬と塩を併用するとよいでしょう。
■エラ病
エラに何かが取りついて病気になることを、まとめてエラ病と呼んでいます。外見からは判断できず、熱帯魚が異常行動をとる(水底で動かなくなるなど)ので、かろうじて発見できます。
原因は細菌(カラムナリス)や、原虫(トリコディナ、キロドネラ)や、寄生虫(ダクチロギルス、ギロダクチルス)など、いくつかあります。たたどれが原因か特定することは困難です。
水底でぼーっと動かなくなる、逆に狂ったように泳ぎまわる、エサを食べなくなるなど、普段と異なる行動をとります。やがてエラが動かなくなったり、開いたままになったりして、呼吸困難で死亡します。
白点病用や尾ぐされ病用の治療薬で薬浴させます。寄生虫の場合は、イカリムシ・ウオジラミ用の治療薬が有効。ただし原因が特定できないため、適切な薬を選びにくいのが現状です。
■ウーデイ二ウム病
コショウ病、ベルベット病ともいわれ、海水魚に多い病気ですが、汽水魚や卵生メダカもかかります。
ウーディニウムという原虫が皮膚に寄生します。
皮膚に黄色っぽくて細かい点がつき、コショウを散らしたように見えます。白点病よりもかなり小さいので、区別できます。点は頭部からつきはじめ、やがて全身が覆われて死亡します。
白点病用の治療薬で薬浴します。
■エビスチリス病
金魚に多い病気ですが、コリドラスなどがかかることもあります。
エビスチリスというせん毛虫が「着生」します。栄養分を熱帯魚から直接とることはないので「寄生」ではありません。しかしひどくなると着生した部分に穴があいたり欠けたりして、そこから感染症になることがあります。
白い粘着性のある房のようなものが体のあちこちにつき、それぞれが大きくなっていきます。
白点病用の治療薬(色素剤入り)で薬浴するか、塩水浴させます。
■リムフォシステス病
カリブ海からやってくるヤッコの仲間に出やすい病気。
ヒレの先端などにカリフラワーのようなこぶ状の白色患部を生成する。
治療法として患部を切り取り、市販の治療薬を説明書に従って使用する。
■松かさ病
鱗立病ともいいます。
よくわかっていません。金魚に多いエロモナス病の菌が原因ともいわれています。
鱗(ウロコ)が逆立って、桧かさのようになります。体が水で膨らんできて、やがて死亡します。
水を新しくし、とりあえずエロモナス病用の治療薬を入れます。
■腸管鞭毛虫病(ちょうかんべんもうちゆうぴょう)
ディスカスに多い内部寄生虫です。外見が変わらないことが多く、エサを食べなくなってきたら要注意。予防するため、ディスカスには虫下し剤入りのディスカスハンバーグを時々与えましょう。
鞭毛虫が腸に寄生します。
エサを食べる量がだんだん減り、フンが白くなります。拒食状態になってやせ細り死亡します。
虫下し剤入りのディスカスハンバーグを与えます。拒食状態まで進んだら治療は難しいのですが、イカリムシ・ウオジラミ用の治療薬で薬浴してみて下さい。
■ディスカス病
1987年前後にディスカスの間で大流行したもので、かかるとたいてい3~10日で死亡するという恐ろしい病気です。近年は減りましたが、まだ時々見られます。ディスカスの他、エンゼルフィッシュもかかります。
よく分かっていません。1匹かかると同じ水槽のディスカスも発病します。
体が黒ずみ、じっと動かなくなります。体表から白い粘液を大量に出したり、腹部が膨れたりして食欲がなくなり、やがて死亡します。
尾ぐされ病用の治療薬で薬浴する、温度を30℃に上げる、水のペーハーを5~6に下げる、などで治ることがあります。ただし、何をしても効き目がない場合もあります。
■ネオン病
カラシン(特にテトラ類)、の色が抜けたようになる病気を、ネオン病と呼んでいます。
スリ傷などから何らかの菌が感染すると考えられます。輸入直後に発病するケースがほとんど。水替えなどで体調を崩したものが発病することもたまにあります。
【症状】色が抜けたように白っぽくなっていき、やがて死亡します。
水のペーハーを下げて、パラザンと塩を併用します。
■イカリムシ病
金魚やコイに多く見られる外部寄生虫ですが、大型熱帯魚に見られることもありをます。
イカリムシは1cmくらいの白くて細長い甲殻類で、イカリ状の頭部を魚のヒフに打ち込んで取りつきます
。栄養分をとられるので衰弱します。寄生そのもので死ぬことは少ないのですが、取りついた箇所から感染症になることがあります。
イカリムシ・ウオジラミ用の治療薬で薬浴すると、虫が落ちます。
■ポップアイ
眼球突出症ともいいます。すぐに死に至るような病気ではありませんが、見た目が悪くなります。
よくわかっていません。掃除を全然しない水槽や、水替え直後の水槽に出やすいともいわれています。伝染することはないようです。
熱帯魚の目玉がだんだん飛び出してきて、出目金のようになります。
初期ならば水をきれいにすると治ることがありますが、今のところ治療法はありません。目玉が飛び出た姿のまま、生き続けることも多いようです。
■外傷
ケガをしている熱帯魚を見つけたら、まず隔離しましょう。他の魚が、傷口をつつきたがります。
アミですくう時に傷ついた、魚同士のケンカ、驚いて石にぶつかったなど。
外傷用の治療薬で薬浴します。