ビオトープ メンテナンス

夏の暑さ対策と冬越しの方法

四季折々にさまざまな表情を見せる植物たち。季節の管理はとくに夏と冬がポイント。暑さと寒さを乗り切る工夫を考えましょう。

季節の管理は植物の身になって考えよう

ブロック

水辺の植物も、他の草花と同様、季節によって姿を変え、その環境に対応しようとします。多くは春から夏に生長して花を咲かせ、秋に葉が枯れ、冬には休眠して生長を止めます。それぞれの季節で植物の状態を見極め、植物の立場になって栽培することが大切です。
春は生長を始める季節。室内に取り込んでいた植物は外に出して、よく日の当たる場所で管理します。またこの頃に追肥を施しておくとよいでしょう。鉢の縁に緩効性肥料を適量埋め込みます。植物が急速に生長する夏場は、栄養分や水分を多く必要とする季節。この時期、直射日光が当たる鉢内の水温は想像以上に高くなってしまいます。暑い夏を乗り切る工夫を考えましょう。とくに小さめの器で栽培している場合は注意が必要です。器が小さくなればなるほど水温変化は激しく、日中の水温が高くなってしまいます。そこで大きな睡蓮鉢などに水を張り、器ごと沈めると急激な水温上昇を防ぐことができます。また、水鉢の底にレンガを置いて、底上げすると風通しがよくなり水温の上昇をある程度抑えることができます。西日が直接当たるベランダなどでは、ヨシズやスダレなどを使って日よけするとよいでしょう。さらに夏は蚊の幼虫のボウフラや汚いコケも繁殖しやすくなります。コケやボウフラを退治するには、水中にメダカを泳がせておくと効果的。ボウフラやある程度のコケを食べて、その発生を抑制してくれます。
秋から冬にかけての管理では、また別の管理が必要です。植物の生長が一段落する秋には枯れていく葉を取り除き、翌年の生長に備えます。冬は生長が完全にストップする季節ですが、植物が休眠していても水を切らさないように管理しなければなりません。光はあまり必要としないので、室内に取り込んでもよいでしょう。ただし、熱帯性スイレンなど、日本の寒い冬が苦手な種類は、必ず室内に取り入れて保温しなければなりません。この際も水は絶対に切らさないように注意しましょう。メダカを飼育している場合、氷が張らない地域ではそのまま外で管理しておいても問題ありません。

夏場の水温管理

自然の川や池で生きるメダカやスイレンたちにとっては、冬が一年で最も厳しい季節かもしれませんが、人工的な環境であるミニ・ビオトープで暮らすメダカやスイレンたちにとっては、もしかしたら、夏が一年で最も厳しい季節かもしれません。なぜなら、ミニ・ビオトープの水量は、自然の川や池などに比べれば圧倒的に少なく、水温が高くなりやすいからです。特に直径が35~45cmの小さなスイレン鉢でメダカを飼育している方は、酸欠に対する注意が必要です。夏期に水温が高くなると、水中に溶け込むことができる酸素の最大量がとても少なくなるので、酸素不足(酸欠)になりやすいのです。そのため、このような小さめの容器でメダカ飼育を行っている方は、酸欠の兆候をメダカたちが見せないか、よく観察してあげてください。また魚の数が多過ぎると酸欠になりやすいですから、繁殖して数が増えたら、別の容器へ移動させてください。なお、酸欠になりかけているメダカは水面でロをバクバクさせますから、すぐにそれとわかります。メダカたちの様子から、酸欠になっているようなら、エアポンプを使って軽くエアレーションをしてあげましょう。軽くエアレーションを行うだけでも、酸欠状態はすぐに解消できます。なお、メダカの場合、夏期に33~37℃ぐらいになっても、酸欠にさえなっていなければ、昼間の間だけなら耐えられることも多いようです(ただし、産卵は止まります)。でも、あまり高い水温になり過ぎるようなら、設置場所を半日陰などに移動させたり、ヨシズ・スダレなどで日陰を作ってあげるたりして調整しましょう。

冬場の管理

ヤゴ

冬になると、夏の問にとても元気よく茂っていた水生植物たちは、そのほとんどが葉を枯らし、地下茎の部分だけが生き残り、寒さが厳しい季節が通り過ぎるのを待っています。また、ミニ・ビオトープに泳いでいたメダカたちは、沈んだ枯れ葉の下などにもぐり込み、水の底でほとんど動かずに寒い季節を耐え抜きます。メダカたちの体は、水温が0℃近くになると体内の生命活動が非常に不活発となり、ほとんどエネルギーを消費せずに生きている状態となっているのです。そのため、晩秋から初春までは、屋外に設置してあるミニ・ビオトープにいるメダカたちには、特に餌を与える必要がないのです。また、冬の間は、メダカたちも越冬中で活勅が不活発になっていますので、例え冬の暖かい日に冬枯れして見栄えが悪くなっているミニ・ビオトープの掃除を思い立ったとしても、基本的にミニ・ビオトープの水中部分はいじらずに、外側部分の掃除に止めておいた方がよいでしょう。いくらメダカたちが低温に強い魚であっても、夜間などには水温が0℃近くにもなる冬を乗り切るのは簡単ではなく、水中部分をかき回すことで、メダカに悪影響を与えて死んでしまうおそれがあるからです。なお、屋外のミニ・ビオトープで飼っているメダカがダルマメダカなどの種類の場合は、体力的に弱いために厳しい冬を乗り越えられない可能性も考えられますので、室内に設置した飼育水槽(水温は10~15℃ほどに設定)へ移動させておくとよいでしょう。ちなみに、屋外に設置してあり、水生植物が豊富に植えてある比較的大きなミニ・ビオトープの場合は、前年の夏から秋にかけてトンボが産卵し、ヤゴが越冬している可能性がありますので注意してください。特にギンヤンマなどの大型になるトンボのヤゴの場合は、成魚のメダカもご馳走になってしまいますから、充分な注意が必要です。一般にトンボの仲間は、夏に卵からふ化してヤゴの状態で越冬し、春になって水温が高くなってくると、メダカなどを活発に捕食するようになります。もし、春になってもミニ・ビオトープのメダカたちの数が明らかに減っているようであれば、このヤゴの存在を疑ってみてください。逃げ場のないミニ・ビオトープの水中では、大きなヤゴ(メダカの天敵です)が棲み着いていると、メダカは毎日のように食べられてしまい、その数が確実に減ってゆき、着後には一匹もいなくなってしまうことすらあるのです。もし、春先にメダカの数が減り、ヤゴによる食害の可能性が大きそうであれば、大きな魚綱で水底を何度も掬ってみて、枯れ葉などにヤゴ(枯れ葉によく似た茶褐色~薄茶色の体色をしています)が紛れていないかチェックして見ましょう。

春の芽吹き

春になって水温が上昇してくると、冬の問はすべてが死んでいたように見えたミニ・ビオトープでも、所々で植えられているスイレンの新芽が芽吹いてきます。また、0~10℃と水温が極端に低い間は、水底に沈んでほとんど動かずにじっとしていたメダカたちも、水温の上昇と共に、時々元気に泳ぐ姿を見せてくれるようになります。庭に置かれているこのミニ・ビオトープの水底は、夏から冬の問に降り注いで水底に沈んだ多数の枯れ葉が積もっています。それはまるで、自然の池にある水底のような水景となっているのです。これはこれで自然な印象で悪くないのですが、鉢の中が去年の間に伸びた根で一杯になっている株も多いので、水から一度、取り出して植え換えを行ないましょう。この時、水底に溜まった枯れ葉も、目の粗い魚綱などを倣ってきれいに取り除きます。鉢の下などから長く伸びてしまった根は思いきって切り捨て、鉢の中で伸びて絡まった古い根はある程度間引いてから、新しい鉢へ植え換えます。この時、緩行性(緩やかに効く)肥料の油かすを鉢の下の方の土に適度に(長さ2cm大の油かすを5~7粒)混ぜ込んでおきます。この時期のミニ・ビオトープの水は、夏ほどではないにしろ、電動フィルターを付けていなければ、かなり濁っていると思います。ですから、スイレンの新芽は、光の刺激を少ししか受けられないため、あまり成長がよくありません。そのため、春になったらミニ・ビオトープの水換えを行ない、水がほぼ透明になるようにしましょう。水が濁ったままでは、今後の掃除などの作業も行ないにくく、眺めても水中がよく見えなければ、ミニ・ビオトープを維持する楽しさが半減してしまいます。なお、メダカなどが暮らしているミニ・ビオトープの場合、一度に全水量を交換すると、メダカが水温差ショックや水質差ショックで弱ってしまうことが多いですから、一度に行なう水換えの量は、全水量の3分の1~2分の1程度にしてください。1回の水換えでは水の透明度はそれほど高くならないでしょうから、30分ほど時間を空け、合計3~5回、水換えを行なえば、ある程度の透明度は確保できるでしょう。もし、カルキ(塩素)が入っていない井戸水などを水温調節して使うことができる場合は、ミニ・ビオトープの水温と同じに設定した水を連続注水してあふれさせれば、簡単に水を透明にできます。ただし、メダカたちがいる場合は、水質差ショックを考慮して、連続注水は10分ほどで止め、30分ほど時間をあけてから再開してください。

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