ランチュウ型
このタイプの一番の特徴は背ビレがないという事です。背ビレのあるほかのタイプと比べ、形質的にルーツのフナと最も離れたタイプです。劣性遺伝のかたまりといってもよいでしょう。そのため、背の扁平な幅広で太い形質を維持し、向上させるのはとても難しいといえるでしょう。背ビレがないぶん、泳ぎは4タイプ中最も下手で可愛くちょこちょこと泳ぎます。劣性遺伝要素が多いので、体質的に弱い傾向はありますが、管理を怠らなければ問題なく丈夫に育ちます。
ランチュウ
作出国 | 色・柄 | 鱗構成 | 尾型 | 入手 | 飼育 |
日本 | 素赤・更紗 | 普通鱗性 | 小振りの三ツ尾 四ツ尾・サクラ尾 |
容易 | 普通 |
この品種は、マルコという、今はほとんど見られなくなった肉瘤のないランチュウ原始型金魚の改良種で、現在のように肉瘤の発達した獅子頭ランチュウは江戸時代の末期から明治にかけて確立されました。そのころすでに品評会が盛んに行われているなか、初代石川亀吉氏が家業も忘れ心血を注いで作出しました。背ビレを欠き、背成りが綺麗で太く遣しく、頭の肉瘤が見事な獅子頭に発達した、劣性遺伝の固まりの形質。最も愛好家が多い金魚種です。
A.遠い昔、和金の突然変異で、背びれのないマルコが生まれました。ガラス水槽などのない時代には、金魚は桶や鉢などで飼い、上から鑑賞するものだったため、上見に向いた背びれのない姿が好まれ、改良を重ねて、より艶やかに見られるように追求していったのがランチュウです。上から見た姿の美しさのため、頭の型や短くも開いた尾などがつくり出されていきました。
Q.肉瘤を大きく育てるにはどうすればいいですか?
A.肉瘤の大きさは、遺伝による要素が大きいため、もともと大きくなる素質のない個体を、飼育の過程で立派一な肉瘡に育てることは困難ですが、健康な飼育、良質な餌と適当なたんぱく質である程度は大きくすることが出来ます。繁殖まで行っている場合は、肉瘤がしっかり出るタイプの親を選ぶことで、その形質を仔へ引き継げます。
Q.ツラ、カシラってなんですか?
A.ランチュウを長く飼育していると、よく聞く言葉ですね。どちらも頭のことを指し「ツラ(カシラ)がいい(悪い)」などと使われます。肉瘤には「よい」とされる理想の型がいくつかあり、品評会などでは、それに基づき型の善し悪しが品評されるのです。そのほか品評会では、背のカーブ(背なり)や尾の型や開きなども審査のポイントになります。
Q.ランチュウの名前の由来は?
A.日本名のランチュウは、背びれのない金魚の総称である中国語「蛋虫(たんちゅん)」を由来とする説が有力です。蛋は、卵を意味する言葉。
南京
作出国 | 色・柄 | 鱗構成 | 尾型 | 入手 | 飼育 |
日本 | 赤白・白 | 普通鱗性 | 小振りの四ツ尾 | 難 | 難 |
明確な記録は残っていませんが、原点はマルコと考えられています。歴史は古く、茶の湯に造詣の深い出雲藩主の松平不昧公の時代にも遡ります。今では優良認定個体は島根県の天然記念物指定です。その特徴は、豊かな卵形の腹部から狭い目先に小さく尖った口先を形成する切れのある体型と、深く切れこんだ四つ尾、六鱗を最上とするわびさびあふれる模様。現在は赤勝ち更紗も好まれますが、頭に赤がのるのは審査対象外という、白勝ちがよしとされる数少ない品種です。
A.出雲産の地金でどちらも同じ金魚です。出雲を省略して南京と呼ぶことかあるのです。
Q.ランチュウに似ていますが、肉瘤は出てきますか?
A.ランチュウとよく似ていますが、南京には肉瘤はありません。頭が尖った型をしている点もランチュウと異なります。
Q.南京には真っ白いタイプもいるのですか?
A.ランチュウや地金は、品評会の審査のため「よい」とされる色や型の規定があり、そこでは赤色のない金魚はよしとされないものが多くあります。そんななか唯一ともいえる白色を認めている品種が南京なのです。
江戸錦
作出国 | 色・柄 | 鱗構成 | 尾型 | 入手 | 飼育 |
日本 | 素赤・更紗 | 普通鱗性 | 小振りの三ツ尾 四ツ尾・サクラ尾 |
容易 | 普通 |
ランチュウの体型に、東錦の雑色性モザイク透明鱗をまとう粋な姿が特徴の人気種である江戸錦。2代目秋山吉五郎氏により、ランチュウと東錦を交雑して作出され、その産地にちなみ江戸錦と命名されました。浅葱の発色が重要で、それに赤、黒が混ざります。浅葱の色揚げには真綿を戻し交配に使わざるを得ないため、形と色の両立はとても困難です。しかしそのぷん、とても趣き深い金魚です。今後も質の向上に毎年ゆるみない努力が続くことでしょう。
A.キャリコ病の金魚に見られる、皮膚の奥に透けるようなブルー系の色を「浅葱色」といいます。モザイク透明鱗性のキャリコ柄の金魚に見られる、独特の体色です。
Q.江戸錦の鱗に、銀色がまだらに漉しっているのはどうしてですか?
A.キャリコ柄をつくる、モザイク透明鱗性は、普通鱗と透明鱗が混ざっているのが特徴です。江戸錦で銀色に見えている部分が、普通鱗。輝きのない浅葱色や淡い赤色、乳白色のような白は、透明鱗。濃い黒色や赤色は、どちらの鱗の場合もあります。このキャリコ柄は「三色」とか「雑色」と呼ぶこともありますが、ここでは統一して「キャリコ柄」と呼んでいます。
桜錦
作出国 | 色・柄 | 鱗構成 | 尾型 | 入手 | 飼育 |
日本 | 更紗 | モザイク透明鱗性 全透明鱗性 |
小振りの三ツ尾 四ツ尾・サクラ尾 |
やや難 | 普通 |
原点は、江戸錦の黒と浅葱が抜けた個体から始まります。それをランチュウと戻し交配をして、ランチュウ型で紅白更紗のモザイク透明鱗の色彩が美しい姿に固定されたのが、桜錦です。当初は江戸錦のはねものという位置づけに甘んじていましたが、ランチュウとの戻し交配で、形、色にも磨きがかかり素晴らしい品種に変身しました。その固定には愛知県弥富の深見光春氏が昭和45年から10年間かけて取り組み、その後平成8年、弥宮の伊藤恵造氏により命名されました。
A.黒色のメラニン色素がない、透明鱗性による淡い紅白の体色を「桜色」と呼びます。皮膚を含む鱗の層の、どこに赤色が入っているかによって、この濃淡が表現されています。体表に近ければ赤が濃く、遠ければ淡い赤色になります。またモザイク透明鱗性の個体では、銀色の鱗を散らしたように普通鱗が混じります。この色・柄を桜の花びらに見立てたのが、桜色の由来です。
Q.飼うのは難しいですか?
A.桜錦のルーツは江戸錦。基本的にはランチュウの飼育法と同様と考えてよいでしょう。ハードルが高そうですが、実はそんなに難しくないので、気構えずに飼ってみるとよいでしょう。
ライオンヘッド
作出国 | 色・柄 | 鱗構成 | 尾型 | 入手 | 飼育 |
中国 | 素赤・更紗 | 普通鱗性 | 小振りの三ツ尾 四ツ尾・サクラ尾 |
普通 | 普通 |
中国から欧米への輸出のため、よく発達した丸い肉瘤をライオンのたてがみに見立て「ライオンヘッド」と名づけられたと思われ、日本でもそちらの名が定着しています。型を言葉だけで表すと、背びれがない、ひれが小さく、肉瘤が発達しているなど、まるでランチュウですが、型にまったく異なり、金魚の表現刑の多様さが感じられます。ライオンヘッドの肉瘤は、頭部だけでなくエラぶたも盛り上がり顔全体が丸くなる独特のもの。腹は丸みがあるものの、頭部が大きいぶん体は細く見え、属筒も細いため、若干貧弱に見えてしまうことも。体色は更紗がポピュラーですが、黒色や赤と黒のトラ柄なともあります。
A.大きな頭に小さな体、尾も小さめという体型しているので泳ぎがぎこちなく、頭が大きすぎる場合には下向きになってしまうのも仕方がありません。元気にしているようであれば問題ないでしょう。
Q.頭があまり成長しません。
A.遺伝的な個体差があり、頭の型や大きさは個体により異なります。ランチュウに比べると、肉瘤の発達しない個体は少ないように思います。
Q.どのくらいの大きさに育ちますか?
A.小さなサイズで輸入されることが多く、大きなものをみる機会は少ないですが、成長すると15センチ以上には育ちます。
花房
この品種は中国から渡来しました。日本花房と大きく異なる点は、背ビレがないことです。特徴である鼻摺孔の肥大した房も、日本花房のそれより自分の口を覆うほどかなり発達する資質を持っています。左右均等に揃った大きな房をリズミカルに振りながら泳ぐその姿は愛らしく、太めではありますが元気なチアリーダーを思わせます。また、大きな房が邪魔をして工サを取りづらそうですが、とても器用に食べます。