金魚 水槽のセッティングと内部レイアウト

水槽の準備

一般的なガラス水槽での飼育を説明します。金魚の飼育を始めるにあたって水槽を置く位置、内部のレイアウトをどうするかは、楽しく飼育する上で重要な要素です。あらかじめ必要条件を踏まえ、構想を練って準備しておきましょう。ここでは、必要条件と設置例を紹介したいと思います。水槽を置く場所は、なるべく直射日光を避けられ、かつ明るい場所が好ましいでしょう。水温の変化を抑えながらも、十分な光が入る場所が望ましいからです。水槽は水が入るとかなり重たいですから、設置面はしっかりして、水槽が傾く事のない場所を選びましょう。水が掛かると危険ですから、家具や電化製品の上には置かず、専用の台を準備した方がよいです。畳の部屋などに設置するときには、水槽台の脚がめりこまないよう、脚部に板等をあてがって下さい。金魚のストレスを防ぐため、振動の激しい場所や子供の手の届くところもなるべく避けて下さい。設置する位置が決まったら、水槽をセッティングします。全体の水平を確認してから内部レイアウトに入ります。水槽や、水槽レイアウトに使用する機材は奇麗に洗っておいて下さい。配置の順序は、底面フィルターを使用する場合には、それから設置します。その後、洗った大磯砂を背面を高く敷き、ヒーターを使用する場合にはそれを埋めこみます。これはサーモスタット一体型がよいでしょう。次にアクセサリー、エアストーンの配置です。エアチューブや電源コードは邪魔にならず目立たないよう、キスゴムで止めます。砂が舞わないように皿等を敷き、水を張り水草をレイアウトします。金魚の事を考え、アクセサリーは控え目に。最後に電源を入れて完成です。エアポンプは水面より高くして逆流を防止します。

調和水槽について

水槽飼育を行う場合、水槽内の浄化サイクルが上手に回っていれば、水槽内は安定し、常にクリアな状態を維持出来ます。それを調和水槽といいます。調和水槽は、水槽内の金魚と水草の代謝サイクルのバランスが保たれた状態を維持する事で成り立ちます。金魚の排泄物を水草が吸収し成長し、金魚の呼吸作用と成長した水草の炭酸同化作用のバランスが上手にかみ合っているという関係です。金魚の排泄と水草の吸収生育バランスを効率よく設定する事で、上手くいっていれば、水草は元気で浄化機能をいかんなく発揮します。そのため、浮遊藻類の繁殖もなく、水は常に澄んだ状態をキープ出来るのです。この調和水槽が出来れば、美観的にも申し分ないレイアウト水槽になり、水替えもいらず理想的。究極の水槽でしかし現実には、理想通りにバランスを保つのは難しいといわざるを得ません。これは、金魚の飼育数、成長率で排泄物の量に差が現れ、水草の生育条件が著しく変化するためです。また、金魚は水草を好んで食べますのでそのバランス等、さまざまな不安定要素をクリアしなくてはいけないからです。ですから水槽を維持するには、循環濾過システムが有効なのは当然ですが、それ以上に、日常の観察だけでなく、水草の手入れをこまめに行う等の必要以上のメンテナンスが必要になります。定期的かつ頻繁な水替えも必要になり、そのつどフィルター、底砂の清掃も行わなければならず、水槽数が増えると思うに任せません。レイアウト水槽で楽しむ場合はそれも楽しみのうちですから、頑張りましょう。

水槽飼育のメリットとデメリット

水槽飼育のメリット

近年のガラス水槽の進歩と発達は、初心者でも基本を守れば大きな失敗もなく金魚の室内飼育を楽しめるという点で、画期的な事だと思います。当初のガラス飼育容器は、朝顔形や寸胴形の形状で、装飾には情緒がありましたが、手作りのため高価でした。そのうえ容量が小さいため、皆それで飼育していたころは管理が難しく、あたかも朝顔のように金魚の命も短命だったのです。近年、それよりも格段に容量が大きく丈夫な水槽が開発され、また製造工程が機械化された事で、価格も60cm水槽なら比較的安価で手軽に揃えられる環境が整ってきました。これは金魚飼育の普及に、大きな貢献と恩恵をもたらしました。そのおかげで、集合住宅であっても上手に美しく、楽しい金魚飼育が出来るようになったのです。現在では室内ガラス水槽におけるアクセサリー、濾過システム、温調器具的にコントロール出来、環境変化の穏やかな条件での飼育も可能になっています。今までお話してきた金魚飼育のポイントをよく理解して上手に使いこなせば、失敗は限りなく少なく出来ます。また、池では見られない金魚の横見の観賞が楽しめるという事も特筆に価します。それまで、一般的に金魚は上見で(上からのぞくように)観賞する様式だったからです。しかし、特殊な種類を除けば、横見も美しい品種も多々いますので、楽しみ方の様式、範囲も広がったといえるでしょう。さらに水槽飼育は、外敵の被害から金魚を守るという点でも屋外の池飼育に比べて格段に有利だと思います。これらが室内飼育水槽飼育のよいところですが、この簡便さ手軽さ、コンパクト性のなかにこそ、表裏一体のデメリットもあるのです。次はその点をお話します。

水槽飼育のデメリット

デメリットは池飼育と比較した場合、室内水槽の特徴は、どちらかというと、世話をする人が第一に優先されているという点です。設置、観賞、管理のしやすさが優先され、金魚本来の住空間としての配慮が後回しになっている事実は否めません。金魚にとってみれば、人間がレイアウトを楽しむ装飾効果などは、障害物として映るケースの方が多く、そのうえ人の出入りの多い室内で四方から見られる環境は決して快適ではないと思います。また、水槽飼育による器具の技術進歩は温調、濾過方式、ライティング等あらゆる面で進みました。しかし金魚の本来の生態から見ると、まだまだ新鮮な外気、燦々と降り注ぐ太陽、広い水面と豊富な水量など、自然の恩恵の偉大さには遠く及ばない事は明白です。水槽はデコレーション、器具、底砂など付加仕様が多いほど、また大きい水槽ほど掃除や水替えが厄介で、大変になるのは当たり前です。室内で水を使うため、その煩わしさは、設置の場所、段取りを出来ていないと大きな問題にもなります。60cm水槽なら、ポピュラーで量産されているので、安価で気楽に楽しめますが、成魚では狭いといえるでしょう。それより大型の水槽になると極端に高価ですし、普及するには至らないでしょう。そうはいっても、水槽飼育が今後ますます普及するのは、必至でしょう。そこで、これら水槽飼育のデメリットを極力減らす意味で、水槽レイアウトの項で究極シンプル水槽を紹介しました。観賞性よりも金魚の居住性を優先し、かつ丈夫な金魚を育て、デコレーションよりも金魚自体を観賞するという事を重視した提案として、参考にして頂きたいと思います。なお、土佐金やランチユウ等も水槽飼育は出来ますが、飼育上は本来向きません。しかし趣味で飼うぶんには問題ないでしょう。また、ベランダ等を利用して、プラスチックのフネを置き、室内水槽は観賞用と考え、ローテーションして楽しむのもよい方法です。

工夫次第で広がる飼育容器のいろいろ

まだまだある飼育容器

さて、金魚飼育を楽しむ容器として、ポピュラーな例である室内飼育でのガラス水槽について紹介しましたが、その他にも金魚の飼育容器はあります。現在では特に、材質・形のバリエーションも色々考えられるくらい増えました。極端な事をいえば、品評会や本格的な繁殖を目指すのでないならば、たとえバケツであっても、これまでお話してきた飼育法や季節管理さえマスターすれば十分飼育出来るのです。しかし、金魚にとってはより快適な飼育容器が好ましいのはいうまでもありません。ここでは、スペース的、コスト的にも手軽で、飼育管理さえしっかりやりさえすえれば、より快適で、飼育の醍醐味も味わえる容器について紹介します。飼育容器においては、その材質、色、深さ、容量、厚み等、それぞれに特徴があります。上手に使いこなすには、そのそれぞれの特徴を上手く利用したり、補う必要があります。そのポイントを知っているか知らないかでは、金魚への影響は大違い。知っていれば、池や水槽にひけを取らない飼育が出来ますし、知らないと思わぬ失敗を招くケースも往々にあります。それでは、飼育容器と共に、先輩や仲間の体験や、著者が実際に使って知り得た、上手に使いこなすポイントについてご紹介します。これらは、実践に基づく内容なので、すぐに役に立つでしょう。大掛かりでなく、ほんのちょっとの工夫や気遣いで、使いやすく、素晴らしい容器として使う事が出来るはずです。

発泡スチロールの空き箱

●特徴
飼育容器として使うのに手軽な容器で、誰もが一度はお世話になるものです。軽くて丈夫、しかも保温性がよく、非常に重宝します。さらに、発泡スチロール自体は厄介なゴミになりかねませんが、飼育容器として利用すれば、立派な池になるのもよい点です。密閉すれば抜群の保温性を発揮します。私たちの日常生活でも、例えば、弁当を温かく、生鮮食品は新鮮に保つため冷凍輸送にも使われている事はご存知と思います。金魚の輸送にもその特性は有効です。利用している人も多いとでしょう。さらに、この発泡スチロール容器は、舟や池で飼育する前の一時隔離容器としても非常に適しています。この素材の持つ保温性を上手に使うのがポイントです。

●注意点
保温性のよさが非常に優れているのは述べた通りですが、その保温性が使い方を知らないと、逆に致命傷となるのです。具体的にいうと、通常、飼育容器に使うときは密閉状態でなく開放された状態で使用してしまいがち。開放して他用すると、発泡スチロール容器は外気の温度をどんどん取り込んでしまいます。暑い日には熱く、寒い日には冷たくキープしてしまいます。容量が小さい容器だと、その影響は特に顕著になります。盛夏や真冬にはその点を理解しておく必要があります。つまり、盛夏には日覆い、真冬には夕方蒸れないよう、若干の隙間を作ってフタをして外気を遮断する事が、必要不可欠になります。

睡蓮鉢などの陶製容器

●特徴
金魚の飼育容器として、今はあまりなじみはないのですが、歴史的に見ると、450年ほど前、中国で『盆養』という呼び方をされて陶製容器が使用されていたようです。盆とはここで紹介する、陶製の鉢を意味します。日本でも、江戸時代室内飼育容器として使われていた事が、錦絵などに描かれている事からわかります。陶製の鉢としては、今でも民家の庭先や玄関脇でたまに見かける事があります。支那鉢という、口が比較的小さく、背の高い装飾の凝った陶製鉢です。しかし、現在では、とても高価で簡単に手が出ません。その代わり、口が広く支那鉢よりも浅い25cmくらいの平鉢式のすいれん鉢が、手ごろに入手出来、むしろ表面積が大きいので望ましいといえるでしょう。直径が60cm~1m程度のすいれん鉢は、風情ある観賞性の高い容器です。若者も土佐金の鑑賞をこの鉢で楽しんでいます。

●注意点
1mの直径があれば、小さな池並みですから池に準じた飼い方でよいのですが、60cm程度の直径で60リットル以下、いわば60cmのレギュラー水槽程度の水量のものがポピュラーです。広口なため酸素は溶けこみやすいのですが、そのため外気の影響を受けやすく、その点を補う事が上手に使いこなすポイントといえるでしょう。真夏の炎天下では、20cm幅の日除け板などを使うのも、有効な方法です。冬場なら少し青水を濃くして、夕方以降は板をもう1枚増やすなど、蒸れないように保温する事を心掛けてあげるとよいでしょう。上見で観賞をするのには、すいれん鉢のような陶製飼育容器は趣きも深く、絶好でしょう。素焼きの容器は、苔つきはよいですが、冬季は染みこんだ水分が凍結すると割れやすいので、注意が必要です。断熱材を巻いて保温しましょう。

トロ舟・衣装箱などのプラスチック容器

●特徴
ここで紹介する、プラスチックや木枠にビニールシートを張った舟と呼ぶ容器は、比較的手軽に移動出来るすぐれものです。自分の飼育スペースに応じて、ベランダや玄関脇など自由に置く事が出来るのが特徴。昔から移動可能な池の総称を舟と呼んでいます。代表的な写真で示したような左官用のトロ舟は、価格は2千円から特大でも1万5千円くらいでホームセンター等で販売されており、求めやすいものです。元々セメントの練り箱なので丈夫で、緑が変形する心配なく使えます。深さは20cm前後で若干浅めですが、工夫次第でしょう。また、材料の厚みが薄い場合は保温効果が乏しいため、工夫が必要です。プラスチック素材の場合、特に衣装箱などは、紫外線に弱い傾向はありますが、その簡便性と丈夫さは大きな魅力。

●注意点
上記のように、素材の厚みや深さに対する保温性の考慮等が必要です。出来れば設置は土のなかに埋めて、自然の保温材を使えば一番よいですが、保温材として発泡スチロールや建材用の断熱材を底面と周囲に貼れば対応出来ます。透ける素材の場合は、その対策も出来るので一石二鳥です。また、排水栓及び排水場所を確保して垂れ流ししないように設置しましょう。自分の身長に合わせて作業しやすい高さに設置すると、とても観察・管理が楽です。排水しやすいように50:1程度の傾斜をつけておくと便利でしょう。こういった工夫で、本格的なコンクリートタタキ池気分で十分品格のある飼育を堪能出来ると思います。清潔にして、人に迷惑をかけないように心掛ける事も重要です。

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