カメ病気の症状・原因と治療・予防1

カメの症状から、どんな病気が疑われるかがわかります。ここではカメがかかりやすい病気の症状と原因、治療と予防法を紹介しましょう。

栄養障害

ビタミンA欠乏症

症状と原因

食欲がなくなる、目が腫れる、くしゃみや鼻水が出るなど。半水棲種の子ガメに多く、子ガメでは皮膚の潰瘍がみられることもあります。レタスなどの淡色野菜ばかり与え、エサのバランスが悪く、ビタミンAが不足することが主な原因。ほかにも消化管、肝臓、腎臓などの内臓疾患により、ビタミンAの生成が低下して欠乏症になります。冬眠前に十分に脂溶性ビタミンが摂取できていないと、冬眠から起きた後にも発生しやすくなります。

治療

雑食&肉食性のカメは、ときどきビタミンAのサプリメントやレバーなどをあげると予防になります。草食の陸棲ガメの場合は、エサの野草や野菜にバリエーションをつけ、多くの種類を食べさせることで予防を。治療はビタミンAを投与し、二次感染がみられる場合は、抗生物質の点眼や内服、注射なども行ないます。

代謝性骨疾患

症状と原因

完全陸棲種の子ガメに多い病気。紫外線不足や食餌のビタミンD不足、カルシウムとリンのバランスが悪いことなどが原因です。甲羅の硬質化に障害が起こり。甲羅の成長不良、軟化、変形が発生。

治療

飼育環境とエサの内容を見直すことが、予防と治療になります。ハ虫類用の紫外線ライトなどでUVBを含む紫外線を照射し、さらに太陽光の日光浴をできるだけさせてやります。1日12~14時間程度、ケージ内に光が入るようにすると理想的です。水棲ガメの場合はカルシウムとリンを1.5対1、陸棲ガメの場合は4~5対1で与えるようにします。カルシウム剤を投与して補給してもOK。ビタミンDを授与することもあります。

医原性ビタミンA過剰症

症状と原因

皮膚に水病ができ、脱落したり潰瘍ができたりする症状。高濃度の総合ビタミン剤の過剰摂取が原因です。

治療

ビタミンAの投与を中止し、抗生物質で治療します。

チアミン欠乏症

症状と原因

目がくぼんだようになったり、筋肉の萎縮、発作、食欲が低下してやせるなどの症状がみられます。水棲ガメに、チアミンを破壊するチアミナーゼを含む冷凍魚、貝類などのエサを与えていると起こります。

治療

チアミン(ビタミンB1)を投与。冷凍魚は煮るとチアミナーゼが崩壊するので、煮てから与えるようにします。

呼吸器の病気

細菌性肺炎

症状と原因

カメの肺は左右の2葉から形成されています。しかし、気管分枝部はカメの頭部寄りにあるため、誤嚥性(唾液や食べものなどが気管に入ること)の感染では、片肺だけが侵されることが多いのです。主な症状は、呼吸が早くなる、開口呼吸などで、水棲種、半水棲種では片肺に感染すると傾いて泳ぐ、水中に潜りたがらないなどの行動が見られます。

治療

抗生剤を授与して治療しますが、強制給餌が必要になることもあります。適切な飼育環境での飼育が予防につながります。

呼吸器感染症

症状と原因

元気がなくなり、食欲不振、体重の減少がみられます。鼻孔が汚れたり、鼻汁、呼吸困難、「ヒューヒュー」「ピーピー」などの異常音を出すこともあります。重症になると、口を開けて呼吸したり、呼吸時に頭や四肢をゆっくり上下に動かす行動がみられます。水棲ガメでは、呼吸器感染症になると浮力の均衡がとれなくなり、傾いて泳ぐようになります。細菌、真菌、ウイルス感染が原因。急激な温度変化といった飼育環境の悪さ、栄養不良、ビタミンA欠乏症など栄養障害によっても発生します。陸棲ガメでは、飼育環境が低温すぎることが原因に。ビタミンA欠乏で粘膜上皮の防御作用が低下して、感染することも原因になるとみられます。

治療

細菌の感染があれば抗生物質を投与します。多くの場合、強制給餌が必要で長期にわたって治療が必要です。ケージの温度などに気をつけ、適正な環境で飼育することで予防できます。

鼻炎

症状と原因

完全陸棲種に多く見られます。原因はさまざまで、細菌感染やビタミンAの欠乏による鼻腔粘膜の免疫の低下、急激な温度変化、粉塵の多い床材など不適切な環境などが複雑に関係しています。主な症状は、鼻孔からの分泌物による汚れや鼻汁。他に、呼吸異常音や開口呼吸、あるいはカメ特有の呼吸困難症状(ボビング:頭頚部や四肢を上下に動かす)が見られます。

治療

抗生剤やビタミンAの投与を行います。適切な飼育環境を整えることで予防しましょう。

耳の病気

中耳炎

症状と原因

半水棲種、水棲種に多い病気で、主な原因は細菌感染です。片側や両側の鼓膜が隆起しますが、多くの場合、活動や食欲の低下は見られません。

治療

鼓膜の下半分を切除して、膿を出し洗浄します。局所的、または全身的に抗生物質の投与を行ないます。日頃からケージ内を清潔に保つことが予防につながります。

皮膚や甲羅の病気

皮膚炎・外傷

症状と原因

同じ環境で複数のカメを飼育していると、同居している別のカメにかまれる事故が発生。また、飼育容器の中でグッズ類に接触するなどして外傷が起こることも。これらの外傷に起因した細菌感染から、炎症、潰瘍、びらんなどが見られます。水棲種、半水棲種では、水質汚染によって細菌以外に真菌感染も発生。甲羅の感染症はシェルロットと呼ばれます。

治療

ケガした患部を消毒して治療しますが、症状が重い場合は、全身への抗生剤療法を行います。複数飼育で唆傷がある場合は、別々に飼育し、グッズ類はカメが触れないように設置。環境が不潔にならないように定期的にそうじすることが予防になります。

甲羅の損傷

症状と原因

交通事故や犬などにかまれる事故によって発生。甲羅の破折や欠損、唆傷が見られます。とくに腹甲は背甲と比べて薄いため、損傷は肺や消化管などの内臓にまで波及することもあります。

治療

患部を消毒し、抗生剤を使用。破損した甲羅は、ピンやワイヤー、プレート、樹脂などを使用して修復します。カメを広いケージに移し、同居させているカメは別々にすることも必要です。傷があると細菌感染なども起こしやすくなるので注意しましょう。

甲羅膿瘍

症状と原因

甲羅の下の組織に潰瘍がみられ、重症になると、まれに体腔をつらぬくこともあります。血液を通して細菌が広がるなど、おもに細菌感染が原因です。外傷がきっかけで膿瘍が起こることもあります。

治療

甲羅の潰瘍を除去し、殺菌剤や抗生物質などで局所治療を行ないます。外傷を受けないようにすることが予防につながります。

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