カメの症状から、どんな病気が疑われるかがわかります。ここではカメがかかりやすい病気の症状と原因、治療と予防法を紹介しましょう。
消化器・泌尿器・生殖器の病気
食滞(便秘)
初期は排便がないだけで元気に見えますが、次第にいきむようになり食欲が低下します。四肢の力が弱くなるため、歩かなくなることも。重症になると甲羅の内部で肺が圧迫され呼塀困難になり、口を開けて呼吸します。運動不足や飲水不足、エサの繊維質が足りない、飼育環境が悪いなどが原因です。
広い環境で運動させ、温浴を行います。それでも改善しない場合は、乳酸菌やセルロースなどの薬剤を投与するほか、消化管蠕動促進薬を投与。適切な飼育温度やエサ、広い環境での飼育が予防になります。
寄生虫
原虫類、線虫や条虫などの蠕虫(ぜんちゅう)類が認められ、とくに蠕虫や回虫などの線虫が検出されます。非病原性の寄生虫もありますが、病原性の重度の感染が起こると、下痢や成長不良が発生。フンに寄生虫の成虫や卵が見られることもありますが、とくに症状がないこともあります。
外部寄生虫は成体を除去し、内部寄生虫はフンから検査をして駆虫剤を投薬します。カメには内部寄生虫がいることが多く、共生してカメの健康に問題ない場合もあります。
陰茎脱・直腸脱
食滞や卵塞による力みが主な原因とされ、総排泄腔から粘膜が逸脱。一見すると陰茎はマッシュルーム状、直腸は筒状を呈します。粘膜組織が脱出すると歩行により粘膜が損傷するため、炎症が悪化。陰茎脱はクサガメに、直腸脱は陸棲種に多く見られようです。細菌感染やビタミン不足など、複数の要因が関与して発生します。
外科的に切除したり、整復を行って治療します。日頃から適切なエサを与え、陸棲種では繊維質と水分が豊富なエサを与えることが大切です。
卵塞
卵が産卵されずに体内に停滞している状態で、産卵に適した場所が掟供されないことが主な原因です。適切な産卵場所がととのっていても、卵管炎、ホルモンのアンバランス、脱水などが原因になったり、変性卵や過大卵など卵に要因があることもあり、これらの原因が複雑に関与します。主な症状は、食欲や活動量の低下、穴掘り行動、いきみ、総排泄孔から出血や分泌物が出るなどの症状があります。X線撮影で診断します。
産卵を促進させるため、産卵に適した広い産卵床を整備します。それでも産卵しない場合は、外科的開甲手術を行い、卵を摘出します。
膀胱結石
初期は無症状ですが、次第に排尿が困難になったり頻尿になり、いきむようになります。食欲の低下もおもな症状です。リクガメの中でも、ギリシャガメ、ホシガメ、ケヅメリクガメに多いようです。水分不足や低湿度、カルシウムの過剰投与が原因で、尿酸結石やカルシウム系の結石ができます。
膀胱から総排泄脛に移動した結石は、総排泄孔から破砕して摘出します。そうでない場合は開甲手術で摘出。エサにカルシウムを添加している場合は量を減らすこと、高たんばく質のエサ(配合飼料など)を控えることが予防につながります。
痛風
リクガメに多い病気。初期は無症状ですが、徐々に元気や食欲が低下し、やせていきます。血液中の尿酸という値が高くなって起こります。脱水や栄養のアンバランスなどが原因。
水を多く飲ませて、尿酸を体外へ排泄させます。温浴なども有効でしょう。
肝不全
初期は無症状ですが、しだいに元気や食欲が低下してやせていきます。栄養のアンバランスのほか、細菌やウイルスの感染が考えられます。
ふだんから栄養バランスがよいエサを与えることが予防につながります。治療は難しく、肝臓の薬を与えるしかありません。
クチバシ・口腔の病気
口内炎
口の中に違和感があるため、口を開けたままになります。重症になると口から悪臭や分泌物が出て、食欲不振を引き起こします。細菌感染、損傷、ビタミン欠乏などが原因。
消毒剤や殺菌剤を塗布し、ビタミンの投与を行ないます。普段から適正なエサをあげることで予防しましょう。
クチバシの可長
やわらかいエサを多く与えたり、代謝性骨疾患による頭骨の変形が主な原因。クチバシが伸びすぎるとエサを食べられなくなります。リクガメは、クチバシが伸びすぎて変形することがあります。
クチバシは削って治療し、エサの内容を改めます。草食のリクガメには、野菜の茎や貝殻などもエサに加えるといいでしょう。
その他の病気
日射病・熱射病
温度が高温になりすぎ、体温を下げることができないのが原因。口を開けて苦しそうに呼吸したり、アワを吹くなどの症状があり、放置すると命に関わります。陸棲ガメも日陰のない直射日光の当たる場所での日光浴は危険です。
すぐに涼しい場所にカメを移動し、少しずつ水をかけて体温を下げてやります。水温や環境温度の管理には十分に注意すること。